吹奏楽に音楽を取り戻そう

吹奏楽コンクールから音楽が消えてどれくらい経ったろう。コロナ禍を挟んだせいか、随分長く経ったであろう今年、ネット上ではあるが久しぶりにいくつかの支部大会の演奏を聴いてみた。かった...
それは各大会の一部を聴いただけで、脳が聴くことを拒否してしまったから。ああーツマラン。

作曲者も曲名も違うのに、みんな同じ曲になってるんだもん。全部おんなじ音色なんだもん。打楽器がうるさいんだもん。きっとこういうのを「コンビニ音楽」っていうんだろうな。

バンドの個性なんてどこにも無いんじゃん。

おいおい一体どうなってんだ吹奏楽(コンクール)!!

あっそうか !これだったら審査員は判りやすくて点数つけやすいよね!だれが審査員だっていいよね!
きっとそういうことだろうね。

今の吹奏楽コンクールって、音が合ってて、アインザッツがとってもキチンと揃ってて、大きな音が出せれば金賞もらえて次の大会に進めるんだね。審査員も指導者も指揮者も楽でいいねえ。

でもこれって音楽のコンクールですよね??こんなんでイイんですか???

 

こうやって音楽を体験してきた子供たちはどうなって行くんだろう。
と思っていたら、どうやらその子供たちが既に指導する側、楽曲を提供する側、審査する側の人間になっていることに思い至り愕然とする。今にして思えば数年前に某音学大学の吹奏楽演奏会を聴いた時に、既にその兆候がみえて驚いたっけ。

 

吹奏楽(特にスクールバンド)に係わる全ての指導者・教育者よ、これで良いのか?イイワキャナイゼ!
もっと本当の音楽を子供たちに体験させようとは思わないのか?

今の学校活動の中で、先生方は部活動と真剣に向かい合う時間を持つことは大変なんでしょう。
でもね、技術を磨くことだけが音楽表現の手段では無いのです。普段の生活の中に、人と人とのふれ合いの中に、音楽は潜んでいます。野山や海など自然(ひょっとしたら都会の喧噪)の中から美しいサウンドが聞こえてくるのです。
どうかそんな普通のことを、短い時間の中で子供たちとみつけて、先生の好きな音楽を授けてやってください。純粋に音楽に向かい合う事を教えてあげてください。

どうか過去の作曲家の良い音楽、あなたが好きだった音楽をたくさん聴かせてあげてください。

(でも、一番今問題なのは高校・大学・一般の所謂コンクール上手なバンドなんだけどね。)

 

良い音色を知ろう・作ろう

演奏者の皆さんも考えてください。
いつもどんな練習をしていますか?ロングトーンで好きですか?

皆さんの吹く音を聞いていると、音色がモノトーンに聞こえます。色では無くて大きい音かそれよりちょっと小さい音かの違いくらいしかオジサンには聞こえません。

ピアノ・ピアニッシモって何のことでしょう。
ええ、今あなたたちが演奏で使っている音量より、もっともっと小さい音だと思ってください。
うんと小さい音だけれど、楽譜に記されているからには作曲家にとって必ず必要であり、意味があるのです。だから聞こえなくて良い音では無い。
そんな音を作る時にはどんな息を楽器に吹き込みますか?きっとそれは暖かい息、大事に大事に発音されてきれいに響かなくてはなりません。そんな音を出す練習してますか?

翻ってフォルテ・フォルテシモと楽譜に書かれたところを演奏する時、唯々早くて多い息を楽器に吹き込んでいませんか?
今の管楽器は性能が良いから、無理矢理息を吹き込んでも割れたような音にはならないのかもしれません。
オジサンのような昭和の時代の国産楽器は、無理矢理息を吹き込むと割れた汚い音になって、不快でした。だからどのように息を入れたら良い音になるのかを考えて演奏していたのでしょう。そうすることで個人個人に個性的な音色が生まれ、それが纏まって、その吹奏楽団の音色となっていったのかもしれません。
嬉しくて叫びたい時、怖くて叫びたい時、音で表現するとすればどちらもフォルテ・フォルテシモでしょう。
でもこのときの音色はどうでしょう。もしも明るい音と暗い音を吹き分けることが出来たら、悲しいや憂鬱をピアノピアニッシモで吹き分けることが出来たら、音楽の表現方法は格段にひろがるのです!

そして各々の演奏団体毎に、違った音色を持つことも非常に大事なことだと思います。
そのためには個人個人の音色を磨くこと。個性を持たせることを考えてロングトーンに励んでみませんか?
そして、良いオーケストラ(吹奏楽ではない管弦楽)の音色を聴くことも大事なんですよ。

指導者と演奏者が短い時間でも各々の役割を果たして活動していれば、必ず良い結果が出ると思います。
そしてそれは必ずしもコンクールの成績とは無関係だと言うことです。

 

もう一度吹奏楽に音楽を取り戻そう。

 

                            2023.9.29 ウインドギャラリー社主